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メディア掲載履歴

全国賃貸住宅新聞の連載コラム「アトラクターズ・ラボの市場トレンド分析」2010年
第1回
賃料査定に確固たる理由が必要
第2回
将来賃料が分からなければ投資はできない
第3回
失敗しない商品企画の立案方法
第4回
エリアの需給バランスは分かるか
第5回
新規供給はいつまで続くのか?
第6回
需要減退の隠れた要因
第7回
賃料はどこまで下がるか
第8回
キャンペーンのあり方
第9回
賃貸住宅市場反転の時期
第10回
キャッシュフロー視点での物件評価手法
第6回「需要減退の隠れた要因」
リーマンショック前後から賃貸住宅市場の需給バランスの潮目が変わり、空室率の悪化を招き、礼金などの一時金の減額に始まり、賃料の下落へと波及していった。市場では着工戸数が大幅に減少することで、需給調整されるかと思いきや、未だに改善していない。今回の需給の崩れは「需要の減退」に因るところが非常に強いのが特徴である。
需要に相当する借家世帯数を都市圏において分解すると、(1)流入超過人口、(2)外国人人口の増加、(3)世帯分離による増加の3点になる。(1)の流入超過人口はピーク期よりは低いが以前高い水準を維持している。これは都市の方が地方よりも職が多いことに起因するので、有効求人倍率などを比較するとこの傾向は今後も続くと想定される。(2)の外国人人口も一時より減ったものの、都心部を除いては増加していることに変わりはない。
(3)の世帯分離が今回のタイトルである「需要減退の隠れた要因」で、これに急なブレーキが掛かっている。この問題は今後の賃貸住宅市場に濃い影を落としている。
世帯分離は具体的に言うと、親元から離れて子どもが一人暮らしを始めるケースが最も一般的である。景気悪化で職に就けず、一人暮らしがしたくても経済的にできない人が増えている。仲介・管理会社の方から「解約は絶えないけれども、入居者はどこに行ったのだろうか?」とよく聞かれるが、「実家に戻った」というのが端的な答えになる。
これを都区部での世帯人員(=人口/世帯数 現在は2.0人程度)の前年同月比の差分で見たものが掲載グラフとなる。グラフ上で下に行くほど世帯分離は進むことを表す。リーマンショック前までは-0.015〜-0.020の近辺だったものが、以降は0に近づく一方で4月現在は-0.006となっている。これまで人口が一定であっても世帯人員が減少することで世帯数は増えてきたものが、そうとは言えない状態に近くなってきている。
この影響度は分かり難いので数字にすると、リーマンショックの際の世帯分離状況が今も続いていたら、都区部の世帯数は約1.8万増えていた計算になり、この数は都区部の民営借家世帯数163万世帯の1%強となる。つまり都区部全体の空室率を1%押し下げるほどのインパクトを持っているのである。では今後どうなるのかが気になるところだが、この世帯分離は景気と連動することが分かっている。景気が回復し、失業者数が減少していくと以前に近い水準に戻っていくと考えられるので、景気指数はオーナー・管理会社などにとって見逃せない情報なのでご注目頂きたい。
グラフ
【参考】人口予測結果 http://www.a-lab.co.jp/product/yosoku.html

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