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メディア掲載履歴

全国賃貸住宅新聞の連載コラム「アトラクターズ・ラボの市場トレンド分析」2010年
第1回
賃料査定に確固たる理由が必要
第2回
将来賃料が分からなければ投資はできない
第3回
失敗しない商品企画の立案方法
第4回
エリアの需給バランスは分かるか
第5回
新規供給はいつまで続くのか?
第6回
需要減退の隠れた要因
第7回
賃料はどこまで下がるか
第8回
キャンペーンのあり方
第9回
賃貸住宅市場反転の時期
第10回
キャッシュフロー視点での物件評価手法
第5回「新規供給はいつまで続くのか?」
世帯数よりも住宅数が上回っていることや空室率の上昇などから、賃貸住宅において新築供給があってはならないかのような論調があるが、本当にそうなのだろうか? もちろん答えはそうではない。
なぜなら、(1)前回のエリア別需給バランスに見たように新規需要が生まれていることと、(2)老朽化したストックが減少していることを要因にして、新規供給=需給バランスの崩れにならないからである。
実際、前回の需給バランスで見たように、2007年以前の数年間は需給がタイトなために、賃料は増額もしくは据え置き(築年が経過し、据え置きすることは実質的には値上げ)していたケースが多かった。
これらの需要と供給を差し引きすると、エリアの需給バランスが出てきます。分譲マンションが竣工と同時にほぼ満室になることから、この需給バランスの意味は賃貸住宅の空室率と連動します。グラフは東京23区の需給バランスですが、0より上の棒グラフが新規需要で、下が新規供給となり、その差し引き(需給バランス)を折れ線グラフで表しています。
供給サイドを考える場合に、今のストック=1年前のストック+新規年間供給戸数 ― 年間滅失戸数であることを意識する必要があり、これが上記の(2)の理由に相当する。 これの意味していることはたとえ借家世帯数が変わらなくても、(新規供給戸数 ― 滅失戸数)がプラスにならなければ、需給は悪化しないということである。
例えば、住宅土地統計調査によると、首都圏の過去のストックは大幅に減少している。過去5年おきの調査結果の差分を取ると、グラフのようになり、1都3県で1998-2003年の滅失戸数は76万戸、2003-08年のそれは64万戸にも及ぶ。この5年間の増減を1年単位にすると、15.2万戸、12.8万戸となり、新規需要が増えなくてもこれだけの数の供給は需給バランス維持に必要ということになる
この間の滅失戸数は特にバブル期に建てられたアパートが非常に多い。面積が狭く、水周りが3点ユニットなどで、リフォームがし難いゆえに、木造の耐用年数22年とともに、市場価値を失い、マーケットアウト(市場退出)が進んでいるのが現状である。
また実際建て壊さなくても、募集を出さなくなったいわゆる「デッドストック」は多い。 最初に上昇していると言った空室率はデッドストックを含むので、デッドストックが増える分だけ空室率は上昇していくことになるが、市場ニーズに合わせながらリフォームと募集を行っている物件の実質的な空室率は10%前後でほとんど変わらないだろう。
もし実質的な空室率が上昇したら、自然と供給が抑えられることになるだろうが、現在の都心部などはこれに相当することになる。
今回のリーマンショック以降の需給悪化は急激であったがゆえに、かなりナーバスになっているが、長期的に一定量の新規供給は今後も続くことに変わりはない
グラフ

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