0.5次層が動き出して“行列マンション”増加中
今年3月、週刊ダイヤモンドで「マンション動く」という特集企画に参画させてもらった。そして、このゴールデンウィーク、10箇所以上のマンション販売センターを見て回って、局面がさらに変化していることを感じた。
変化は二つある。
一つは、0.5次層が動き出したこと。そして、もう一つは、一次取得層に「資金に多少余裕あり」の人が増えだしたこと。この層を私は1.5次層と呼んでいる。
初めてマイホームを買う人を「一次取得層」という。35歳前後で最初の子供が小学校に入る前にマイホームを買いたいと考えるファミリー世帯が一次取得層の代表像だ。
この一次取得層よりもう少し若く、まだ子供が生まれていない夫婦……年収は300万円から400万円といったところ。それが、一次取得層の一歩手前という意味で「0.5次層」と呼ばれる。
そういった0.5次層がゴールデンウィークから動き出したのである。
年収は400万円程度でも毎月払っている家賃は高い。12万円とか15万円。共働きならば20万円近い家賃を払い、2年に一度の更新料も求められている。
高い家賃をいつまでも払い続けたくない、いつかはマイホームを買おう、しかし、その時期はもう少し先、と考えていた0.5次層がモデルルーム見学を始めた。彼らが志向するのは、年収400万円程度でも手が届くマンション。3000万円台を中心にする3LDKだ。
話を聞くと、「まだ先と考えていたが、今はマンションの底値と思えてきた」「買い時ではないか」。そのような声が多い。
これは、新しい動きである。
3月に「マンション動く」という特集記事をつくりながら、じつは私自身「どれくらい動くか」は読めないでいた。景気回復が思わしくないので、買い機運が高まっても、その高まりは弱いかもしれない。そう思っていたのである。しかし、0.5次層が動き出したとなると、話は別だ。
過去、一次取得層とともに0.5次層まで動き出したときは必ずマンションブームが起きていた。今回もその可能性が高まったのである。
1.5次層が狙うのは、“血統書付き”のマンション
一方で、一次取得層の様子も変わった。
今動いている一次取得層は従来よりも予算が多いのだ。これまでの一次取得層は4000万円台の3LDKを狙う傾向が強かった。ところが、今、一次取得層に人気が高いのは5000万円台の3LDK。ちょい高めなのだ。
それは、買い控え期間が長く続いたことが原因だろう。
08年秋のリーマン・ショック以降、日本ではマンション不況が続いた。買い控えが広まり、多くの一次取得層が様子見を決め込んだ。様子見をし、折からの節約ブームで財布のひもを締めているうちに頭金が大きくなった。
加えて、今年1月から贈与の特例枠が大きくなった。親から資金援助を受けてマイホームを買うときは、贈与税を払わなくてもよいという額が、これまでの500万円から最大1500万円まで拡大された。
二つの理由でマイホーム購入の予算が大きくなった一次取得層を私は1.5次層と呼んでいる。
この1.5次層は、「どうせ買うなら、多少高くても間違いのないものを」と考え、良質なマンションを好む。駅に近いマンションや再開発エリアのマンション……血統書付きのペットのように間違いのないマンションである。
つまり、今は、0.5次層と1.5次層がそれぞれの志向にあったマンションを探している時期と言える。